あおぞらにんぎょ2011年01月29日 12時09分05秒

 朝起きたら枕元に人魚が置いてあった。
「やった、願いが叶った!」
 ボクは喜びのあまり、鱗が黒光りする人魚を抱き上げた。
 説明書を読むと、その鱗は太陽電池になっているらしい。

 西暦二一○○年。
 二酸化炭素濃度の上昇に伴う温暖化がいよいよ深刻になった。
 このままの状況が続くと、古生代と同じ環境になって人類は死滅してしまう。
 そしてこの問題は、科学にとどまらず宗教にも及んだ。
 神は人をお造りになる前に、二酸化炭素を減らす生き物をお造りになったのではないか?
 困った宗教団体は、新たな学説を提唱した。

「人魚だ人魚だ。神様が地球で最初にお造りになった人魚だ!」
 嬉しくなったボクは、早速人魚を抱えて家を飛び出した。
 照りつける光を太陽電池に受けて、ウイーンと人魚が動き出す。
「初めまして。あたし水辺に行きたいな」
「じゃあ、ボクが連れて行ってあげるよ」
 近所の池に人魚を浮かべると、彼女は生き生きと泳ぎ出した。

 宗教団体が造り出した人魚のおもちゃは、泳ぎながら口から二酸化炭素を吸ってそれを水に溶かす。
 そして、古生代もこんな風に二酸化炭素が減ったと教えている。
 今日も各地の水辺では、太陽の光を浴びて沢山の人魚が泳いでいる。



500文字の心臓 第101回「あおぞらにんぎょ」投稿作品

コメント

_ haru ― 2011年01月29日 19時24分12秒

みんなが、同じタイトルで競作するんですね。それぞれの感性で、
タイトルが同じでもまるで違う個性が競作し合っているようです。
「にんぎょ」って人魚ですよね?「にんぎょう」が人形ですよね?
あらら、私は、いつもトンチンカンなコメントですみませんです。

_ haruさんへ(つとむュー) ― 2011年01月31日 07時44分49秒

タイトル競作、面白いです。
「あおぞらにんぎょ」を、どのように解釈しもいいんです。「青空に、ンギョ」でも。それで作品が書けるかどうかは、また別の問題ですけど(笑)
最初、「あおそらにんきよ」に濁点が付く、という案を考えていたのですが、ストーリーが作れませんでした。

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