スイングバイ ― 2015年02月01日 21時48分49秒
徹夜で飲んだ朝帰りの千葉駅で、一年前に別れた元カノを見かけた。
紺色のスーツに身を包み、黒髪をまとめている。颯爽と改札を抜ける後姿を、俺は思わず追いかけた。
総武線東京行きホームへ上がる階段。揺れるうなじとタイトスカートの御御足が俺の心を奪う。
「あいつ、こんなに奇麗だったっけ?」
あの頃、俺達はまだ学生だった。あれから彼女は就職したのだろう。ホームに着くと、その姿は白い電車の中に消えていく。
「えっ、特急?」
千葉から東京までの間、特急でも快速でも時間はそれほど変わらない。メリットは乗り心地だけだ。つまり、それだけ経済的に余裕があるということ。
「俺はまだこんなことやってんのに」
飲んでばかりの自分が情けなかった。差をつけられてしまった。だからどんな会社なのか見てやろうと思った。
幸い彼女が乗ったのは自由席。通路側に座る彼女の後姿を眺めながら、俺は三つ後ろの席に深く腰掛けた……
「お客さん、終点ですよ」
ヤバい、つい寝てしまった。彼女もすでに居ない。それ以上に俺を驚かせたのは車窓の景色だった。
「こ、ここはどこですか?」
「南小谷ですよ。長野県の」
深々と降る雪に、やはりすれ違う二人だったと俺は思うのであった。
500文字の心臓 第136回「スイングバイ」投稿作品(★正選王)
紺色のスーツに身を包み、黒髪をまとめている。颯爽と改札を抜ける後姿を、俺は思わず追いかけた。
総武線東京行きホームへ上がる階段。揺れるうなじとタイトスカートの御御足が俺の心を奪う。
「あいつ、こんなに奇麗だったっけ?」
あの頃、俺達はまだ学生だった。あれから彼女は就職したのだろう。ホームに着くと、その姿は白い電車の中に消えていく。
「えっ、特急?」
千葉から東京までの間、特急でも快速でも時間はそれほど変わらない。メリットは乗り心地だけだ。つまり、それだけ経済的に余裕があるということ。
「俺はまだこんなことやってんのに」
飲んでばかりの自分が情けなかった。差をつけられてしまった。だからどんな会社なのか見てやろうと思った。
幸い彼女が乗ったのは自由席。通路側に座る彼女の後姿を眺めながら、俺は三つ後ろの席に深く腰掛けた……
「お客さん、終点ですよ」
ヤバい、つい寝てしまった。彼女もすでに居ない。それ以上に俺を驚かせたのは車窓の景色だった。
「こ、ここはどこですか?」
「南小谷ですよ。長野県の」
深々と降る雪に、やはりすれ違う二人だったと俺は思うのであった。
500文字の心臓 第136回「スイングバイ」投稿作品(★正選王)
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