三階建て ― 2021年05月28日 20時04分29秒
私は『アスリートのお宅拝見』という番組のキャスター。都内のある場所に来ている。
「さて、今日のゲストのスポーツは何でしょう?」
実は私も知らされていない。建物を見て予想する様子も番組の一部なんだそうだ。
「この家は……」
多くのアスリートの自宅の中にはトレーニング室があり、そこで種目も予想できる。が、今回は外からも種目が丸わかりだった。
「壁に沢山のホールドが付いています!」
そう、三階建てのコンクリートの外壁には壁を登るためのホールドが無数に付けられていたのだ。
そこでアスリート本人が登場。案の定スポーツクライミングのオリンピック代表、野口中選手だった。
「野口中選手はこの壁を毎日登られているのでしょうか?」
「もちろんです。そのための三階建てですから」
私は建物を見上げる。
屋上までかなりあるしオーバーハングもある。これを毎日登ったらかなりの練習になるだろう。
「それでは中も拝見させていただいてよろしいでしょうか?」
「もちろんいいですよ。ではこれを付けて下さい」
野口中選手は私にハーネスを差し出した。
「といいますと?」
彼女はニコリと笑うと私に言ったのだ。
「玄関は屋上にありますので」
500文字の心臓 第181回「三階建て」投稿作品
「さて、今日のゲストのスポーツは何でしょう?」
実は私も知らされていない。建物を見て予想する様子も番組の一部なんだそうだ。
「この家は……」
多くのアスリートの自宅の中にはトレーニング室があり、そこで種目も予想できる。が、今回は外からも種目が丸わかりだった。
「壁に沢山のホールドが付いています!」
そう、三階建てのコンクリートの外壁には壁を登るためのホールドが無数に付けられていたのだ。
そこでアスリート本人が登場。案の定スポーツクライミングのオリンピック代表、野口中選手だった。
「野口中選手はこの壁を毎日登られているのでしょうか?」
「もちろんです。そのための三階建てですから」
私は建物を見上げる。
屋上までかなりあるしオーバーハングもある。これを毎日登ったらかなりの練習になるだろう。
「それでは中も拝見させていただいてよろしいでしょうか?」
「もちろんいいですよ。ではこれを付けて下さい」
野口中選手は私にハーネスを差し出した。
「といいますと?」
彼女はニコリと笑うと私に言ったのだ。
「玄関は屋上にありますので」
500文字の心臓 第181回「三階建て」投稿作品
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