法螺と君との間には2011年05月13日 19時52分44秒

「君はなぜ、オオカミが出たなんて言ったんだ?」
「……」
「黙ってないで何か言いなさいよ」
「……」
「じゃあ、まず名前を聞かせてもらおうか」
「……」
「君、言葉がわからないの?」
「ちょっと待て。きっとこの少年は名前を知られたくないんだ」
「知られちゃマズイのね」
「そうだ。両親にバレるとこっぴどく叱られるからな」
「違ぇよ」
「なんだ、しゃべれるじゃないの。ははーん、両親に叱られてその憂さ晴らしでやったとか?」
「だから、違ぇって言ってんだろ」
「いや、学校で女の子にフラれたんだよ。その腹いせに違いない」
「違ぇよ。何の権利があって俺のプライベートに首突っ込むんだよ? というか何で俺はオオカミに尋問されなきゃならねえんだ?」
「違うぞ、少年」
「そうよ。私達、オオカミに似てるけどコヨーテなの」
「どっちも同じじゃねえか。どうせ羊を襲うんだろ?」
「それも違う。食べるだけだ」
「そうよ、君達も食べるでしょ?」
「ほらみろ。おーい、オオカミが出たぞ! みんな逃げろ!」
「こら、待て。名前を間違えるな!」
「ああ、行っちゃった。私達もまだマイナーね」
「いや、あの少年が『コヨーテが出たぞ』って叫んでくれれば一気に……」



500文字の心臓 第104回「法螺と君との間には」投稿作品

コメント

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