麦茶がない ― 2016年06月17日 06時21分46秒
職場に着いてレジに立つ。売り場を見渡すと、棚からニョキっと頭を出している商品があることに気がついた。
コンビニの棚の高さはおよそ百四十センチ。しかし、その商品だけは高さ百八十センチに達している。
「なんだ、あれ?」
売り場に行ってみると、それは麦茶だった。
「店長、お早うございます。それ、長くて目立ちますよね。新商品らしいですけど」
バイトの珠代クンが俺に挨拶をする。
「本当は緑茶パックと一緒に並べたいのですが、長すぎて一番上の棚に置くしかなくて……」
彼女も困っているようだ。俺は麦茶を一つ手に取った。
「なになに、賞味期限は……二◯二六年だって?」
なんて長いんだ。
でも、いくら賞味期限が長くたって、それまでには売れてしまうだろう。商品の入れ替わりが激しいコンビニのことだから、すぐに小さなパッケージに取って代わるに違いない。
しかし麦茶のパッケージは、一年経っても長いままだった。
『ねえ、店長、知ってます? 麦茶って平安時代から飲まれていたんだそうですよ』
ニョキっと棚から頭を出すそいつらを眺めるたびに、あの頃の珠代クンの言葉を思い出す。
500文字の心臓 第148回「麦茶がない」投稿作品
コンビニの棚の高さはおよそ百四十センチ。しかし、その商品だけは高さ百八十センチに達している。
「なんだ、あれ?」
売り場に行ってみると、それは麦茶だった。
「店長、お早うございます。それ、長くて目立ちますよね。新商品らしいですけど」
バイトの珠代クンが俺に挨拶をする。
「本当は緑茶パックと一緒に並べたいのですが、長すぎて一番上の棚に置くしかなくて……」
彼女も困っているようだ。俺は麦茶を一つ手に取った。
「なになに、賞味期限は……二◯二六年だって?」
なんて長いんだ。
でも、いくら賞味期限が長くたって、それまでには売れてしまうだろう。商品の入れ替わりが激しいコンビニのことだから、すぐに小さなパッケージに取って代わるに違いない。
しかし麦茶のパッケージは、一年経っても長いままだった。
『ねえ、店長、知ってます? 麦茶って平安時代から飲まれていたんだそうですよ』
ニョキっと棚から頭を出すそいつらを眺めるたびに、あの頃の珠代クンの言葉を思い出す。
500文字の心臓 第148回「麦茶がない」投稿作品
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