ほくほく街道2022年02月15日 22時30分02秒

「パパ、見て!」
 娘のくるみが携帯ゲーム機を持ってきた。息子の北斗と一緒に。
 画面には一本の道と、その両側に並ぶお店が映し出されている。
「右が私のお店で、左が北斗のお店なの」
「沢山建てたね!」
 俺は驚いた。お店は十軒はあったからだ。
「このお店は?」
「これは果物屋だよ」
「本屋」
 娘と息子が交互に紹介する。
 果物屋と本屋とはなんとも可愛らしい。が話を聞くと意外と手間がかかっているという。果物屋を開くためには果物の収穫が必要で、本屋には本が必要だからだ。と言ってもひとこと文学らしいが。
「その隣りは?」
「靴屋だよ」
「干芋屋」
 干芋屋?
 俺は息子に尋ねる。
「芋を収穫したなら、そのまま芋を売ればいいんじゃないの?」
「この芋は姉ちゃんの果物屋から買ったんだ。買ったものをそのまま売るのは転売だから、禁止されてるんだよ」
 その言葉をゲーム機の転売屋にも聞かせたい。
「じゃあ、その隣りは?」
 俺が訊くと子供たちは次々と紹介してくれた。
「薬屋」
「ホタテ」
「釘屋だよ」
「ホッケ」
「櫛屋さん」
「ホヤ」
「鎖屋」
 いやいや干物はもういいから。
 俺も子供たちと一緒にこのゲームをやってみたいと思ったんだ。



500文字の心臓 第185回「ほくほく街道」投稿作品

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