告白2012年04月07日 07時22分06秒

「お前の事が好きだ」と、はにかみながら俺を見つめる吾朗の唇には髭が黒々と光っている。こいつは髪質が硬そうだから、きっと髭も硬くて痛いに違いない、って俺は何を考えてるんだよ、こいつとキスするわけでもないのに。「どうしてもダメか?」「ああ」「理由を聞かせてくれよ」と迫る吾朗。でもやっぱり俺は、吾朗の髭が気になってしまう。俺の髭も吾朗と同じくとても硬い。しかも、先端の枝毛がカールしているのだ。「やっぱりお前は純一郎のことが好きなんだな」「ゴメン吾朗」「そうだよな、あいつはイケメンだもんな」。違うんだよ吾朗、純一郎は髭がすごく柔らかいんだ。キスすると、俺たちの髭は気持ちよくくっつくんだよ。そう、それはマジックテープのように。ぴたっ、べりッ、ぴたっ、べりッ。純一郎とのキスは極上の感触なんだから。「じゃあこれを最後にするから!」「何をするんだ吾朗、うっ……」。吾朗が強引に俺の唇を奪うと、お互いの髭が強く絡み合った。そしてべりべりべりッって、なんだよ、この心が吸い取られるような感触は。今まで味わったことがない快感。「やっぱりお前を忘れられない」「吾朗……」。そして俺たちは熱く見つめ合った。



500文字の心臓 第112回「告白」投稿作品

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