結晶 ― 2011年08月22日 20時32分57秒
「結晶ってさ、気体からもできるんだよ」
そんなこと、どうだっていいのよ。純一も相変わらずね。
「ほら、あれを見てごらん。地面から噴気が出てるだろ」
ここ、恐山って火山地帯だったのね。
「ガスに含まれる硫黄が気体から直接結晶になってるんだ」
確かに噴気が当たるところは、キラキラと黄色く光ってるわ。
「それでさ、気体が結晶になる現象を『昇華』って言うんだけど知ってた?」
純一のそんな講釈が懐かしい。それがまた聞けるのも、この場所のおかげかもね。
「それって違うんじゃない?」
思わず反論しちゃった。昔はよくこうやって議論したもの。
「じゃあ、何て言うんだい?」
純一は意地悪そうに問いかけてくる。
「晶出?」
その響きに私は嫌な言葉を思い出した。
——消失。
純一と会話をするのは彼が失踪して以来だから。
「そうとも言うね」
なんでそんなに平気でいられるのよ。
純一がいなくなって私、すっかり絶望しちゃって、最後にここに来たんだから。
「じゃあ、この結晶は霊が晶出したもの……?」
イタコが右手を開くと、人の形の結晶が姿を現した。
そう、それは私の魂の形。
「今頃になって会いに来るなんて、あなたも意地悪ね」
老婆が私の気持ちを口にした。
500文字の心臓 第106回「結晶」投稿作品
そんなこと、どうだっていいのよ。純一も相変わらずね。
「ほら、あれを見てごらん。地面から噴気が出てるだろ」
ここ、恐山って火山地帯だったのね。
「ガスに含まれる硫黄が気体から直接結晶になってるんだ」
確かに噴気が当たるところは、キラキラと黄色く光ってるわ。
「それでさ、気体が結晶になる現象を『昇華』って言うんだけど知ってた?」
純一のそんな講釈が懐かしい。それがまた聞けるのも、この場所のおかげかもね。
「それって違うんじゃない?」
思わず反論しちゃった。昔はよくこうやって議論したもの。
「じゃあ、何て言うんだい?」
純一は意地悪そうに問いかけてくる。
「晶出?」
その響きに私は嫌な言葉を思い出した。
——消失。
純一と会話をするのは彼が失踪して以来だから。
「そうとも言うね」
なんでそんなに平気でいられるのよ。
純一がいなくなって私、すっかり絶望しちゃって、最後にここに来たんだから。
「じゃあ、この結晶は霊が晶出したもの……?」
イタコが右手を開くと、人の形の結晶が姿を現した。
そう、それは私の魂の形。
「今頃になって会いに来るなんて、あなたも意地悪ね」
老婆が私の気持ちを口にした。
500文字の心臓 第106回「結晶」投稿作品
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