あなたと出会った場所2013年09月28日 07時38分19秒

「それで、それは何処?」
「サークルの歓迎会会場だったような……」
 私は友人を一人一人尋ね、あなたの痕跡をメモに取る。
 ようやく事実を受け止めることができるようになった私。そんなささやかな行動がリハビリになると信じて。
「俺は、二次会の居酒屋だったかな」
 あなたはしっかりと、友人達の記憶の中に生きていた。
「今さらこんなことを言ってもしょうがないけど、気を落とすなよ」
 うん、私頑張る。
 うじうじしていてもしょうがないから。
 でも夜道を一人で歩いていると、つい泣きたくなってくる。
「ねえ、どうしてなの……」
 アパートの手前の線路を渡る歩道橋。ガタンゴトンと下を走る電車と冷たい夜風が、いつも私を現実に引き戻してくれる。そこはあなたと私が交差する場所。
「もう飲まないって誓ったのに」
 酔って記憶を無くして酒乱と化す自分と、いつになったら決別することができるのだろう。



500文字の心臓 第125回「あなたに出会った場所」投稿作品

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