ため息2015年12月31日 18時20分32秒

「おい悠斗、今日はどこに行く?」
「なんだ、正樹か。どこでもいいけど。」
「じゃあ、ゲーセン行こうぜ!」
「ああ、ゲーセンね。」
「なんだよ、行きたくないのかよ?」
「そんなこと言ってないし。」
「なんかその喋り方、行きたくないって感じがするんだよな」
「ふーん、どこが。」
「それだよ、それ! お前、語尾に小さくため息入れてるだろ?」
「えっ? バレた?。」
「だから、ため息入れんなって言ってんだよ、疑問符の後に変だろ?」
「おおっ!。」
「意味わかんないし」
「そう?〇」
「ため息、大きくしてどうすんだよ」
「気にすんなって。きっと俺だけじゃないと思うぜ。」
「いや、お前だけだよ、そんな器用なことができるのは」
「そうかな?。 百作品あったら三作品くらいはやってると思うけど。」
「作品ってなんだよ? 『百人いたら三人』の間違いじゃないのかよ、お前、作品だったのかよ」
「正樹こそ。もっと。力を。抜いた方が。いいんじゃないの?。」
「いやいや、ため息つき過ぎだっつーの」
「逆に全然ため息ついてないじゃん。正樹は。」
「だってよく言うだろ? 『ため息つくと幸せが逃げる』って、それ、一応気にしてんだよ」
「えー。俺が知ってるのは『ため息つけばそれで済む』だけど?。」
「なに、それ?」
「母が。教えてくれた。」
「母だって? なに急にかしこまってんの? いつも、『かーちゃん』って呼んでるお前がさ」
「♪ささやーかな。 ♪ぼーくの。 ♪母の。じ。ん。せ。い。」
「歌うな! 歌ったら、たとえ結果が良くても掲載されないだろ?」
「大丈夫。微妙に外してるし。それに正樹だって『掲載』とか変なこと言ってんじゃん。」
「ていうか、よくそんな古い歌、知ってんな?」
「正樹だって古いってよく知ってんな。」
「もうやめようぜ、こんな不毛な会話、ゲーセン行くかって話だっただろ?」
「じゃあ行かない。」
「やっぱ、行きたくないんじゃねえかよ、だったら最初からそう言えよ」
「だって俺達。受験生だろ?。」
「そうだけど?」
「センター試験までもう一ヶ月切ってんだよ。」
「…………」
「もっと素直になれよ。」
「素直って?」
「俺みたいにさ。」
「こ、こうか?。」
「そうだよ。やればできるじゃん。」
「おお!。」
「いいぞ。その調子!。」
「なんか。受験生って感じがしてきた。」
「だろ?。『ため息つけばそれで済む』だよ!。どんどんつこうぜ。」
「ああ。『ため息つけばそれで済む』だな。」
「受験なんて糞喰らえだ!。」
「推薦組は爆発しろ!。」
「雪不足は受験生には嬉しいぞ。」
「三月になったら遊びまくってやる。」
「今も遊んでるけどな。」
「ちょ、ちょっと。余計なこと言うなよ。ところでさ。お前どっちだ?。」



共幻文庫 短編小説コンテスト 第12回「。」投稿作品

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