ありきたり2014年04月27日 21時59分48秒

 ――学校を爆破する。
 そんなことをネットに書き込もうとしているものだから、僕はあわてて麻里を制止した。
「ダ、ダ、ダメだよ、それを掲示板に投稿したら!」
 リターンキーを押そうとする麻里の右手を掴むと、彼女は静かに振り向いた。
「だって今日はエイプリルフールじゃない」
「だけど、そんなこと書いちゃダメなんだよ」
 いったい彼女は家庭でどんな教育を受けてきたのだろう。
 あ然とする僕の表情を眺めながら、麻里は静かに言う。
「じゃあ、警察を爆破、にしておく」
「余計ダメだって!」
 つい、声を荒らげてしまった。
 しゅんとなった彼女は、小さな声で僕に呟く。
「犬小屋は?」
「それなら……ってダメダメ、それもダメ!」
「じゃあ、何を爆破させればいいの?」
「うーん……」
 上目遣いで訊かれると困ってしまう。
 エイプリルフールに爆破予告していいものってなんだろう?
 腕を組んで僕は考える。
「芸術とか?」
 その答えを聞いて素早くパソコンに向き直った麻里は、ポチっとリターンキーを押した。



500文字の心臓 第130回「ありきたり」投稿作品

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