俺の特殊能力 ― 2023年01月19日 22時46分37秒
「紗紀美さんの特殊能力はね……」
「そ、それは?」
学級委員長がゴクリと唾を飲み込みながら、教室の隅で彼の言葉に耳を傾けている。
「クラスメートを納得させるオーラを纏うことかな」
「おおっ、紗紀美にピッタリだよ。それで私は?」
「知佳さんはね……」
今度は図書委員が興味津々の眼差しを彼に向けていた。
「頭の中に行間の声が自然と響くでしょ?」
彼の名前は言亜輝(ことあ てる)。
最近女子生徒に人気のクラスメートだ。
「すごい、すごいよ! 輝君に言われると、なんかそんな特殊能力を持ってるような気になっちゃうよ」
そりゃそうだろ。
学級委員長に図書委員。
彼女たちは自分自身の得手不得手と向き合ってその委員を選択したに違いない。委員名から推測されるその過程を、ちょっと中二病っぽく言い当ててるだけじゃねえか。
ていうか、行間の声が響くってなんだよ。
「ほら、多拓君もこっちに来たら?」
ヤバい、彼女たちに見つかっちまった。
「お、俺はいいよ」
「そんなこと言わないで、多拓君も輝君に調べてもらいなよ」
「そうだよ、すごいよピッタリだよ」
だからそういうのは信じないんだって。
拒み続ける俺に向かって輝は腕を組み、目を閉じて意識を集中させていた。そしておもむろに口を開く。
「君の特殊能力はね……」
「俺は平凡な男子高校生だよ。じゃあな、バイバイ!」
慌てて俺は放課後の教室を後にした。
その日以来、彼の言葉の続きが気になってしょうがない。
俺の特殊能力って……何?
いやいや、そんなのあるわけない。彼の診断なんて中二病のまやかしに決まってるじゃないか。
しかし後日、俺は偶然耳にしてしまったんだ。輝が俺の特殊能力について他のクラスメートと話しているところを。
『多拓君の能力って何だと思う?』
『彼の特殊能力はね……』
それは何だ?
『怪しいものを見定める魔眼だと思うんだ』
くっくっくっ、やはりな。
思わず俺はほくそ笑んでいた。
ミチル企画 2022-23冬企画
テーマ:『中二病』
「そ、それは?」
学級委員長がゴクリと唾を飲み込みながら、教室の隅で彼の言葉に耳を傾けている。
「クラスメートを納得させるオーラを纏うことかな」
「おおっ、紗紀美にピッタリだよ。それで私は?」
「知佳さんはね……」
今度は図書委員が興味津々の眼差しを彼に向けていた。
「頭の中に行間の声が自然と響くでしょ?」
彼の名前は言亜輝(ことあ てる)。
最近女子生徒に人気のクラスメートだ。
「すごい、すごいよ! 輝君に言われると、なんかそんな特殊能力を持ってるような気になっちゃうよ」
そりゃそうだろ。
学級委員長に図書委員。
彼女たちは自分自身の得手不得手と向き合ってその委員を選択したに違いない。委員名から推測されるその過程を、ちょっと中二病っぽく言い当ててるだけじゃねえか。
ていうか、行間の声が響くってなんだよ。
「ほら、多拓君もこっちに来たら?」
ヤバい、彼女たちに見つかっちまった。
「お、俺はいいよ」
「そんなこと言わないで、多拓君も輝君に調べてもらいなよ」
「そうだよ、すごいよピッタリだよ」
だからそういうのは信じないんだって。
拒み続ける俺に向かって輝は腕を組み、目を閉じて意識を集中させていた。そしておもむろに口を開く。
「君の特殊能力はね……」
「俺は平凡な男子高校生だよ。じゃあな、バイバイ!」
慌てて俺は放課後の教室を後にした。
その日以来、彼の言葉の続きが気になってしょうがない。
俺の特殊能力って……何?
いやいや、そんなのあるわけない。彼の診断なんて中二病のまやかしに決まってるじゃないか。
しかし後日、俺は偶然耳にしてしまったんだ。輝が俺の特殊能力について他のクラスメートと話しているところを。
『多拓君の能力って何だと思う?』
『彼の特殊能力はね……』
それは何だ?
『怪しいものを見定める魔眼だと思うんだ』
くっくっくっ、やはりな。
思わず俺はほくそ笑んでいた。
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テーマ:『中二病』
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