赤いサファイア ― 2015年06月14日 10時11分21秒
「お前、『赤いサファイア』って知ってるか?」
俺は突然、編集長に呼び止められた。
「初耳ですが」
「今噂のカフェなんだ。男の娘しか入れないらしい」
そんなものがあるんだ。
「潜入取材するなら職場一美形のお前が適任と思って……」
ボーナスアップの声に乗った俺は、カフェの入口で自分の考えの甘さを知る。
「オカマはダメだ」
マッチョなマスターに追い返されてしまったのだ。
ただ女装すれば良いわけではなかった。男の娘とは、女性よりも女性らしい外見を要するらしい。ルビーよりも赤いサファイアのように。
「腹が出てる」
「化粧が濃い」
「剃り残しダメ」
追い返される度に自分を磨いた。ダイエットと脱毛の結果、ツルツル&スマートな体でようやく入店を許可された。
「メシだ、メシ!」
「いい女ナンパしてぇ」
予想外に賑やかな店内に戸惑う。飛び交うのは普通の男の会話。
「君って新入り?」
「男の娘って疲れるよね、ずっと無口だから。ほら、君もしゃべって息抜きしなよ」
「あ、ああ……」
何か神聖な場所と思っていた俺がバカだった。今までの苦労は何だったんだ?
「クソ上司が人使い荒くってさ……」
記事は適当にでっち上げておこうと、俺は日頃の憂さ晴らしを始めた。
500文字の心臓 第139回「赤いサファイア」投稿作品
俺は突然、編集長に呼び止められた。
「初耳ですが」
「今噂のカフェなんだ。男の娘しか入れないらしい」
そんなものがあるんだ。
「潜入取材するなら職場一美形のお前が適任と思って……」
ボーナスアップの声に乗った俺は、カフェの入口で自分の考えの甘さを知る。
「オカマはダメだ」
マッチョなマスターに追い返されてしまったのだ。
ただ女装すれば良いわけではなかった。男の娘とは、女性よりも女性らしい外見を要するらしい。ルビーよりも赤いサファイアのように。
「腹が出てる」
「化粧が濃い」
「剃り残しダメ」
追い返される度に自分を磨いた。ダイエットと脱毛の結果、ツルツル&スマートな体でようやく入店を許可された。
「メシだ、メシ!」
「いい女ナンパしてぇ」
予想外に賑やかな店内に戸惑う。飛び交うのは普通の男の会話。
「君って新入り?」
「男の娘って疲れるよね、ずっと無口だから。ほら、君もしゃべって息抜きしなよ」
「あ、ああ……」
何か神聖な場所と思っていた俺がバカだった。今までの苦労は何だったんだ?
「クソ上司が人使い荒くってさ……」
記事は適当にでっち上げておこうと、俺は日頃の憂さ晴らしを始めた。
500文字の心臓 第139回「赤いサファイア」投稿作品
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://tsutomyu.asablo.jp/blog/2015/06/14/7668558/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。