それでも星は輝いている ― 2010年09月04日 23時58分43秒
「別にあんたじゃなくったっていいんだけどさ、皆がどうしてもって言うから、仕方なくいってるのよ。そこんとこ分かる?」
天の川のほとりで、俺は織姫と肌を合わせている。
「仕方なくいってるって、気持ちいいからいくんじゃないのか?」
俺は腰の動きを少し早める。
「だって一年に一回のセックスじゃない。いかなきゃ損よ。あっ、それ、いいわ、その調子で頑張って」
俺はさらに腰の動きを早めた。
俺の名前はヘルクレス。残念ながら彦星じゃない。
肝心の彦星は今ごろどうしているかというと――天の川の向こう側の自宅に引きこもっている。温暖化かなにかで流れが激しくなり近寄るのが恐いと、彼が天の川を渡らなくなってすでに五年。最初の年は、輝きが鈍った織姫に、天変地異が起きたのではないかと地球上では大騒ぎになったそうだ。彼女が一年に一度、艶々しく輝くのがそんなに嬉しいのだろうか。地球人の楽しみはよくわからない。
しかし、一番がっかりしたのは織姫だった。一年に一度の楽しみを失ってかなりのヒステリー。そして、彼女はやっと俺に気が付いた。
『あれ? 隣にいい男がいるじゃない。あんた、いつからそこにいるの?』
いや、ずっと前から隣に居たんですけど。
名前は勇者そのものだけど、暗い星ばかりで全然目立ってなかったからね。毎年、逢引に訪れる彦星を眩しく思っていたもんだ。やっとその役が俺にも回ってきたと最初は喜んだ。しかし――
彼女、ぜんぜんいかないんだよ。
いつも俺が先に果ててしまう。するとものすごく機嫌が悪くなるんだ。まるで俺が悪人であるかの如く当り散らす。もしかして、彦星が引きこもってしまったのはこれが原因なんじゃないだろうか。
だから俺は、七夕の暮れ方になると気合を入れて数式を覚えた。解の公式、三角定理、確率分布。それらを頭に浮かべながらセックスに臨むと、なんとか彼女を満足させることができた。彼女が輝きを取り戻すにつれて、地球人にも夏の風物詩を楽しんでもらえたようだ。それにしても、卒業したら二度と使わないと思っていた高校数学がこんなところで役に立つとは。
「いいわ、その調子よ、去年よりずっと素敵」
でも、今年はちょっと趣向を変えてみた。
「ああ、すごくいい。いきそうだわ。もっと、もっと……」
俺は果てることなく腰の動きをさらに激しくする。
なかなかいい方法を見つけたもんだ。これなら去年よりも楽に彼女を満足させることができる。来年も、即興三語小説を考えてみることにするか。
即興三語小説 第71回投稿作品
▲お題:「暮れ方」「気合」「天の川」
▲縛り:以下の五つから三つを選んで使用すること
「季節感を出す」「天変地異を起こす」「主人公がニートである」「セックスシーンを入れる」「派手な喧嘩シーンを入れる」
▲任意お題: 「若のマア」「別にあんたじゃなくったっていいんだけどさ、皆がどうしてもって言うから、仕方なくいってるのよ。そこんとこ分かる?」「綿毛」「川の中のフェラーリ」「リーリーリー」
天の川のほとりで、俺は織姫と肌を合わせている。
「仕方なくいってるって、気持ちいいからいくんじゃないのか?」
俺は腰の動きを少し早める。
「だって一年に一回のセックスじゃない。いかなきゃ損よ。あっ、それ、いいわ、その調子で頑張って」
俺はさらに腰の動きを早めた。
俺の名前はヘルクレス。残念ながら彦星じゃない。
肝心の彦星は今ごろどうしているかというと――天の川の向こう側の自宅に引きこもっている。温暖化かなにかで流れが激しくなり近寄るのが恐いと、彼が天の川を渡らなくなってすでに五年。最初の年は、輝きが鈍った織姫に、天変地異が起きたのではないかと地球上では大騒ぎになったそうだ。彼女が一年に一度、艶々しく輝くのがそんなに嬉しいのだろうか。地球人の楽しみはよくわからない。
しかし、一番がっかりしたのは織姫だった。一年に一度の楽しみを失ってかなりのヒステリー。そして、彼女はやっと俺に気が付いた。
『あれ? 隣にいい男がいるじゃない。あんた、いつからそこにいるの?』
いや、ずっと前から隣に居たんですけど。
名前は勇者そのものだけど、暗い星ばかりで全然目立ってなかったからね。毎年、逢引に訪れる彦星を眩しく思っていたもんだ。やっとその役が俺にも回ってきたと最初は喜んだ。しかし――
彼女、ぜんぜんいかないんだよ。
いつも俺が先に果ててしまう。するとものすごく機嫌が悪くなるんだ。まるで俺が悪人であるかの如く当り散らす。もしかして、彦星が引きこもってしまったのはこれが原因なんじゃないだろうか。
だから俺は、七夕の暮れ方になると気合を入れて数式を覚えた。解の公式、三角定理、確率分布。それらを頭に浮かべながらセックスに臨むと、なんとか彼女を満足させることができた。彼女が輝きを取り戻すにつれて、地球人にも夏の風物詩を楽しんでもらえたようだ。それにしても、卒業したら二度と使わないと思っていた高校数学がこんなところで役に立つとは。
「いいわ、その調子よ、去年よりずっと素敵」
でも、今年はちょっと趣向を変えてみた。
「ああ、すごくいい。いきそうだわ。もっと、もっと……」
俺は果てることなく腰の動きをさらに激しくする。
なかなかいい方法を見つけたもんだ。これなら去年よりも楽に彼女を満足させることができる。来年も、即興三語小説を考えてみることにするか。
即興三語小説 第71回投稿作品
▲お題:「暮れ方」「気合」「天の川」
▲縛り:以下の五つから三つを選んで使用すること
「季節感を出す」「天変地異を起こす」「主人公がニートである」「セックスシーンを入れる」「派手な喧嘩シーンを入れる」
▲任意お題: 「若のマア」「別にあんたじゃなくったっていいんだけどさ、皆がどうしてもって言うから、仕方なくいってるのよ。そこんとこ分かる?」「綿毛」「川の中のフェラーリ」「リーリーリー」
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