気がつけば三桁(ボツ) ― 2010年11月24日 20時15分17秒
「金がほしい」
麻里がそんなことを口にするようになって一年が経つ。
だったら節約すればと俺は言うのだが、彼女は絶えず何かを食べている。
「いつも銀ばかりなの」
それなら、金色に輝く夕焼けの海を見ようと彼女を港に誘い出した。
「金色って素敵」
海の色に見とれる麻里を後ろからそっと抱きしめる。食べ続けているせいで、この一年間のバストアップは見たところ三十センチに達しているようだ。
「でも銀ばかり溜まっちゃって」
麻里は水面に視線を落とす。それはまるで、水の底には銀色の斧しか落ちていないかのように。
俺は彼女を振り向かせ、二人は見つめ合う。
「それでね、金が出たらやめようと思いながら食べてたら、いつの間にか百を超えちゃった。ん……」
麻里とのキスは甘い味がした。一年前ならお姫様抱っこをしていたシチュエーションだが、今はとても持ち上がらない。
「もう、強引なんだから。私も愛してるわ。だから記念に……、あなたにあげる」
付き合ってちょうど一年。ついに彼女は決心してくれたのか。俺の心拍数も倍に跳ね上がる。
「はい、百個目のカンヅメ」
麻里はチョコボールがひしめくバッグの中から、おもちゃのカンヅメを取り出した。
500文字の心臓 第100回「気がつけば三桁」に投稿しなかった作品
麻里がそんなことを口にするようになって一年が経つ。
だったら節約すればと俺は言うのだが、彼女は絶えず何かを食べている。
「いつも銀ばかりなの」
それなら、金色に輝く夕焼けの海を見ようと彼女を港に誘い出した。
「金色って素敵」
海の色に見とれる麻里を後ろからそっと抱きしめる。食べ続けているせいで、この一年間のバストアップは見たところ三十センチに達しているようだ。
「でも銀ばかり溜まっちゃって」
麻里は水面に視線を落とす。それはまるで、水の底には銀色の斧しか落ちていないかのように。
俺は彼女を振り向かせ、二人は見つめ合う。
「それでね、金が出たらやめようと思いながら食べてたら、いつの間にか百を超えちゃった。ん……」
麻里とのキスは甘い味がした。一年前ならお姫様抱っこをしていたシチュエーションだが、今はとても持ち上がらない。
「もう、強引なんだから。私も愛してるわ。だから記念に……、あなたにあげる」
付き合ってちょうど一年。ついに彼女は決心してくれたのか。俺の心拍数も倍に跳ね上がる。
「はい、百個目のカンヅメ」
麻里はチョコボールがひしめくバッグの中から、おもちゃのカンヅメを取り出した。
500文字の心臓 第100回「気がつけば三桁」に投稿しなかった作品
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