日の出パニック2009年01月18日 17時03分26秒

―2008年12月25日、中国上海郊外
 病床の予言者クーは、突然起き上がり目をかっと見開いた。
「日の出の頃、日の出国の使者が闇をもたらす。我が民はダイヤを失うだろう」
 この予言はたちまち中国中に広まった。というのも、クーは大地震やロパク問題などを的中させた偉大な予言者だからだ。人々はパニックに陥った。
「日の出って元旦か?」
「日の出国って日本か?使者とは何だ?」
「ダイヤを失うって、それほどの経済的な損失が?」
 噂が噂を呼び、国際問題に発展しかかったが、実際元旦になってみると何も起こらなかった。クーが予言を外したのは今回が初めてだったが、大騒ぎになったのが響いて失脚した。

―2009年7月22日、日本国立宇宙研究所
「博士、我が国の月探査衛星について、大変なことが判明しました」
「ついに月に墜落か。燃料はもう無くなってしまったからな」
「それがですね、その墜落時間が問題になりそうなのです」
「というのは?」
「本日、中国から日本にかけて皆既日食が起きるのはご存知ですか?」
「ああ、知っているが…」
「墜落時間は、ちょうど日食が上海で観測される頃なんです」
「それが何か問題なのかね?」
「日食観測を邪魔する可能性が…」
「詳しく聞かせてもらおう」
「はい。日食で太陽が再び顔を出す時、とても綺麗に輝くのはご存知ですよね」
「ああ、その美しい形から”ダイヤモンドリング”と呼ばれている」
「そのダイヤの部分に、墜落による粉塵がかかってしまいそうなんです」
「なに!?つまり上海では、今回ダイヤモンドリングは観測できないということか?」
「おそらく…」
「この話は?」
「他の誰にも話していません」
「では我々だけの秘密にしよう。たとえダイヤモンドリングが見えなくても、誰も原因はわからないだろう。大気汚染も顕著だって話だし…」
「………」

―2009年9月14日、中国上海郊外
 予言者クーのもとに、ロケット打上日の予言の依頼が日本から届いた。


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