幸子2008年09月06日 12時08分24秒

 素人でも手軽に文章が書ける方法はないかと、ネットで検索を試みた。
 いろいろなページが表示される中で、目に止まったのはこんなサイトだった。

『私の文章作法』 踊る文章塾 by月影ネット

 これだ!私が探していたものは!
 読んでみると、どうやらプロではない方々が投稿した文章を集めたサイトらしい。詩的なもの、ほのぼの家族、ちょっと恐いもの、青春小 説のような作品まである。さらに、それらの文章をどうやって書いたのか、作法についての特集も組まれていた。こんな感じの気取らない文 章作法なら、私にも参考になりそうだ。

 書くことは決めてある。
 愛する妻。そして愛娘、幸子についてだ。
 未熟児で生まれた幸子は、二人の間にやっと授かった宝物。どうか無事に育ちますようにと祈り続けたおかげか、幸子はすくすくと成長し た。三輪車で転んで、ほっぺを酷く擦りむいた時はドキッとしたけれど。ランドセルがやがてセーラー服に変わり、妻によく似た声でお父さ んと呼んでくれたあの日のことを、今でも忘れない…
 こうして私は、踊る文章塾への投稿作品を書き上げていった。


「あなた、閉じこもって何してるの?」
「ちょっと書物を…」
「地球消滅まであと一時間しかないのよ。最期くらいは一緒に過ごしましょう」
「今ね、家族のことを書いているんだ」
「書いても無駄ではなくて?小惑星の衝突は、すべてを粉々にしてしまうそうよ」
「でも残るんだよ、この月影ネットは」
「えっ、何故?」
「その名の通り、サーバーが月の裏側にあるんだから」
「で、でも私達は、死んでしまうのよ…。それに家族って、私達二人しかいないじゃない」
「だから、新しい家族の物語を書いたんだ。二人の娘のね」
「私達の娘!?まあ、なんて名前なの?」
「幸子。君に似て、目がくりっとした女の子だよ」
「幸子?そんな古風な名前、最近の親はつけないわ」
「でも、いい名前だろ?」
「うーん、素敵な名前。ねえ、詳しく聞かせて…」


文章塾という踊り場♪ 第28回「世界の始まり・世界の終り」または「私の文章作法」投稿作品(★リボンの人選考賞

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