スポットライト ― 2008年07月17日 22時28分09秒
「なに一番後ろに座ってんのよ」
不意に声を掛けられ驚いて振り向く。マリコだった。
「そっちこそ皆の所に居なくていいのかよ」
「別にいいでしょ、隣いい?」
マリコは返事も聞かずに僕の隣に座った。
ここは県民ホールの観客席。舞台では、先ほどまで高校演劇発表会が行われていた。我が部も出場しているのだが、前日に怪我をして出れなくなった僕は、一人でこっそり見に来ていた。
「ずっとここで見てたけど、残念ながら優勝は取れそうも無いぜ。ウチらの一つ前に発表した高校がとても良かった」
「そうみたいね。楽屋からでもすごい拍手が聞こえたわ。ああ、M先輩悲しむだろうな…」
「だからここに来た、と」
「まあね」
優勝できなければ、三年生にとって高校最後の大会となってしまう。先輩の悲しむ姿を見たくないマリコの心中もわかるが、それがここに来た理由というのも、なんとも複雑だ。
「でも準優勝は狙えると思うよ。出来は悪くなかった」
「そうだよね、がんばったもんね」
いよいよ発表の時。優勝はやはり一つ前の高校だった。さらに準優勝も我が校ではなく、主役の女生徒がセーラー服姿で飛んだり跳ねたりと熱演した高校が獲得した。
「バカヤロー!パンツ見せれば賞を取れると思ってんじゃねーぞ。審査員もエロオヤジ!」
「おいおいマリコ」
「だって、あんなパンチラ高校が準優勝じゃあ、先輩可哀想だよ…」
「ほら、みんな行っちゃうぜ」
「ねえ、しばらくここに居させて」
「居させてったって…」
マリコを見ると、疲れたようにうつむいていた。
そうだよ、マリコだって、準優勝の女生徒に負けないくらい精一杯役を演じた後だったんだ。それなのに、僕はといえば、M先輩とのことばかり気にしていた…
「お疲れ様。気が済んだら言ってくれよ」
「ありがとう…」
マリコが僕を見てなくても構わない。ありのままの姿をさらけ出せる存在であればそれでいい。
スポットライトが消えた舞台を、僕はいつまでも見つめていた。
文章塾という踊り場♪ 第27回「七月」投稿作品
不意に声を掛けられ驚いて振り向く。マリコだった。
「そっちこそ皆の所に居なくていいのかよ」
「別にいいでしょ、隣いい?」
マリコは返事も聞かずに僕の隣に座った。
ここは県民ホールの観客席。舞台では、先ほどまで高校演劇発表会が行われていた。我が部も出場しているのだが、前日に怪我をして出れなくなった僕は、一人でこっそり見に来ていた。
「ずっとここで見てたけど、残念ながら優勝は取れそうも無いぜ。ウチらの一つ前に発表した高校がとても良かった」
「そうみたいね。楽屋からでもすごい拍手が聞こえたわ。ああ、M先輩悲しむだろうな…」
「だからここに来た、と」
「まあね」
優勝できなければ、三年生にとって高校最後の大会となってしまう。先輩の悲しむ姿を見たくないマリコの心中もわかるが、それがここに来た理由というのも、なんとも複雑だ。
「でも準優勝は狙えると思うよ。出来は悪くなかった」
「そうだよね、がんばったもんね」
いよいよ発表の時。優勝はやはり一つ前の高校だった。さらに準優勝も我が校ではなく、主役の女生徒がセーラー服姿で飛んだり跳ねたりと熱演した高校が獲得した。
「バカヤロー!パンツ見せれば賞を取れると思ってんじゃねーぞ。審査員もエロオヤジ!」
「おいおいマリコ」
「だって、あんなパンチラ高校が準優勝じゃあ、先輩可哀想だよ…」
「ほら、みんな行っちゃうぜ」
「ねえ、しばらくここに居させて」
「居させてったって…」
マリコを見ると、疲れたようにうつむいていた。
そうだよ、マリコだって、準優勝の女生徒に負けないくらい精一杯役を演じた後だったんだ。それなのに、僕はといえば、M先輩とのことばかり気にしていた…
「お疲れ様。気が済んだら言ってくれよ」
「ありがとう…」
マリコが僕を見てなくても構わない。ありのままの姿をさらけ出せる存在であればそれでいい。
スポットライトが消えた舞台を、僕はいつまでも見つめていた。
文章塾という踊り場♪ 第27回「七月」投稿作品
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