親の都合2007年01月29日 00時07分07秒

「親の都合で、子供を振り回すんじゃない!」
久しぶりにオヤジに怒鳴られた。
孫との団らんを、オレに邪魔されたのが不満らしい。

オヤジは毎朝、孫とのテレビを楽しみにしている。
畳にちょこんと座る姿は、後ろから見てもかわいいものだ。
それをオレが無理やり連れて行ったものだから、
オヤジは怒ったのだ。

でもこれは、子供のためでもある。
息子はもうすぐ小学一年生。
学校が遠いため、毎朝二キロもの道のりを歩かなくてはならない。
だから、今のうちに息子を鍛えねばならぬ。
毎朝のんびりとテレビが見られる時は、もう終わったのだ。

息子は、未熟児寸前で生まれた。
五歳になっても体の線は細く、保育園の送迎も車に乗せている。
そんな息子が、いきなりランドセルを背負って小学校に通えるのか、
心配でたまらない。

そこで思いついたのが、保育園への徒歩通学。
距離も、小学校の半分くらいでちょうどよい。
体力の増強に一役買うことはもちろん、
歩きながら交通ルールを教えることもできる。
道端の自然に季節の移り変わりを探せば、
親子の語らいもはずむだろう。
ほほを刺す木枯らしが、だんだんとやわらかな風に変わり、
つくしが生えてタンポポが咲いたら、もう一年生だ。

そうだ、これは子供のためなのだ。
オヤジに堂々と反論しよう。
オレのウォーキングダイエットや、
自転車通学する女子高生達との遭遇ってのもあるけど、
圧倒的に、子供へのメリットの方が大きいのだ。
勝手にすれば、と、妻も応援してくれている。

「オヤジ! オレからも言わせてもらうぞ。
 あんただって、親の都合で子供を振り回してただろうが。
 だからオレは、こんな親になったんだよ!」

あれれ?こんな事を言うつもりじゃなかったのに・・・
オレの完璧な論理は、どこへ行ったんだ?

「ふふっ、同じ様にあんたもお父さんに連れて行ってもらってたのよ」
二人の喧嘩を笑う、オフクロの声が聞こえてきた。


こころのダンス文章塾 第13回「春:家族のいる風景」投稿作品