ダンスの高校2006年02月20日 11時46分44秒

僕らの母校は、ダンスの高校だ。
リズムに乗って弾け飛んだ汗は、校庭の土に深く染み込み、
熱い季節が訪れるたびに、生徒の心をうずうずさせる。

「文化祭の後夜祭は、ダンスをやります」
新入生となった僕らは、そんな説明に幻滅してしまった。
高校生にもなってダンスをやる羽目になるとは、
思ってもみなかったからだ。
後夜祭には出たい。けれどダンスを踊るのは嫌だ・・・
葛藤する心をよそに、季節は夏に近づいていった。

そんなある日、先輩が目を輝かせて部活にやってきた。
「ダンスの振り付けを覚えてきたよーっ!」
なんでもこの振り付けは、実行委員会のオリジナルらしい。
曲も、最近のヒットチャートから選ばれている。
スカートをひらひらさせながら、楽しそうにダンスを踊る先輩。
その笑顔に見惚れているうちに、
いつしか自分もダンスを踊るようになっていた。

踊ってみて初めてわかったことだが、ステップが結構難しい。
高校生が作るものだからと馬鹿にしていたのを反省する。
実行委員も、さぞかし検討を重ねたことだろう。
簡単すぎると飽きられる。難しすぎると誰も踊れない。
そして何より、格好良くなければ高校生の心はつかめない。
僕らが踊るダンスは、僕らの心を確実に捉えていた。

最も驚いたのは、後夜祭でみんながダンスを踊っていたことだ。
それはまるで、ダンスという伝統を作った先輩方の汗が、
何か得体の知れない雰囲気となって校庭に立ち昇り、
僕らの体を動かしているかのようだった。

一昨年、母校のダンスドリル部は全米の大会で優勝し、
名実共にダンスの高校となった。
僕らの流した汗が、部員達の心をうずうずさせたのだとしたら・・・
あの校庭にはきっと、そんな伝統が息づいているのだろう。


へちま亭文章塾 第6回「ダンス」投稿作品